TheatreGroup"OCT/PASS"vol.33
【大河原公演】2011年7月9日(土)~10日(日)
えずこホール
【仙台公演】2011年7月16日(土)~18日(月・祝)
錦町公園
【仙台特別公演】2011年7月23日(土)
瀧澤寺
【秋保公演】2011年7月24日(日)
ほうねん座民族芸能センター
【古川公演】2011年7月30日(土)
荒雄公園(吉野作造記念館前)
〈出演〉小川描雀 長谷野勇希 美峰子 大山健治 荒野紘也 海田水美 χ梨ライヒ
河村邦画 漣なみ 佐々木久美子 土屋悠太郎
撮影 松橋隆樹
「人や銀河や修羅や海胆は」(冒頭部分) 作:石川裕人
〇遊びたい人々
ここを廃線の軽便鉄道の駅のプラットホームとしよう。
「第六事務所」の粗末な看板が立っている。そうそう猫の事務所です。
五がせかせかとやってくる。
五 昨日の宿直はかま猫君か?かま猫君、かま猫君、
シーン、
五 なんだなんだなんだ、寝てるのか?起床!!
五の後ろにもっそりと立つ一(かま猫)。
五 (それに気づき)ウワ!!
一 おはようございます、事務長。
五 なんだね一体、どこ行ってたんだね君は?
一 ネズミがいたもんですからね、ちょいと、
五 なに?ネズミだと?
一 このくらいの大物が、
五 なぬう?そりゃすごいな、で、捕まえたのかね?
一 ・・・それが、
五 なにをやっとるんだ君は、猫の風上にも置けない奴だね。
一 (色々位置を変える)
五 どうしたんだ?
一 風上に置けないっていうんで、風下を探してるんです。
五 いいよ、もう。ところでかま猫君、昨夜事務局長から連絡がなかったかね?
一 いいえ、ひとつもありません。
五 おかしいな、電話じゃなければ電報は?
一 ありません。
五 速達は?
一 ありません。
五 クロネコヤマトは?
一 皆無です。
五 それは変だよ、かま猫君。虎猫君の情報によるとだ、本日このハンムンムンムン
ムン・ムムネ村にVIPがやってくるというんだよ。
一 エレキバンですか?
五 そうそう、最近肩こりが激しくてねえ。猫は肩こらないなんてのは嘘だねえ。違
うよ、ピップじゃなく、VIP。VeryImportantPerson.
一 ベリアンポンタンパソ?
五 重要人物だよ。
ゾロゾロと人々が出てくる。
みんな一様に晴れ晴れとした顔をしており、挨拶を交わし、プラットホーム
に陣取り、列車の来ると思われる方向を注視する。
五 かま猫君、
一 はい。
五 聞いてみなさい。
一 は?
五 「は?」じゃないよ。夏の日差しに頭をやられて巣を間違えたスズメのように鈍
い奴だねキミは。何の騒ぎか聞いてみなさい。
一 ああ、ああ、ああ、(人々に)失礼いたします。これは一体何の騒ぎかと聞いてみ
なさいとあいつが言ったんだ。僕の気持ちと裏腹にあいつが聞けと言ったんだ。
六 知らないの?
一 はあ、いっこうに。
二 ケンジャがやってくるんだよ。
一 ケンジャ?
七 次の軽便鉄道に乗ってやってくるの。
一 ほうほう、(事務長の所に戻り)
五 わかったかね?
一 ケンジャが検便するそうです。
五 忍者が検便する?なんじゃそりゃ?
一 さて、
それを聞いた人々はみんなジロリと事務長とかま猫をにらむ。
五 かま猫君、何でみんなこっちを見てるんだ?
一 目で見てます。
五 その何でじゃない。ああもういい!!(人々へ)あの皆さん、ちょっと質問させて
いただいてよろしゅうございますか?
三 どんな質問だね?
五 忍者が検便するというのはどういうことなんでしょうか?
人々 (大笑い)
一・五 (も大笑い)
四 ケンジャが次の軽便鉄道に乗ってやってくるんだよ。
五 あの、この鉄道はもう使われておりませんが、
七 あんた達、第六事務所の猫だね?
五 ええ、ニャンが事務長のウ・タントです。
八 やっぱりそうだ。
五 なにがやっぱりなんですか?
六 第六事務所は役に立っていないというもっぱらの噂は本当だった。
人々 まったくだ。
一 ギョ!!
五 何をおっしゃいますやら輪は母は、わが第六事務所はこの社会の蝶番の管理をし
ております。
六 見せておくれ、その蝶番。
五 そ、そ、それは第七事務所にございまして、
二 蝶番の管理をしているお前さん方ならわかるはずだがなあ。
三 鉄道は走ってますよ、事務長さん。
人々、列車の窓枠に見立てたフレームを出し、列車の走行音のオノマトペ
を発する。
列車 【ガタンコガタンガタンコガタンコ シュウフツフツ ガタンコガタンコ シュ
ウフツフツ】
電柱の唸 【ゴーゴー ガーガー キイミイ ガアアヨオワア ゴゴーゴゴーゴゴー】
一 ウ・タント事務長、列車です。間違いなく列車が走っています!!
五 そのようだね、かま猫君。
二 こんな闇夜の原の中を行くときは"客車の窓はみんな水族館の窓になる。
六 渇いた電信柱の列がせわしく遷っているらしい。
三 汽車は銀何系の玲瓏レンズ。
七 巨きな水素のリンゴの中をかけている。
四 リンゴの中を走っている。
八 わたしの汽車は北へ走っているはずなのに、ここでは南へかけている。
六 尋常一年生、ドイツの尋常一年生!!
三 ギルちゃん、真っ青になって座っていたよ。
七 こおんなにして目は大きく開いてたけど、私たちの事はまるで見えないようだ
ったよ。
八 ナーガラがね、目をじっとこんなに赤くしてだんだん輪を小さくしたよ、こん
なに、
六 ギルちゃん、青くて透き通るようだったよ。
二 鳥が、沢山種蒔きのときのようにばあっと空を通ったよ。でもギルちゃん黙っ
ていたよ。
八 お日様、あんまり変に飴色だったわね。
三 ギルちゃん、ちっとも僕たちの事見ないんだ。僕本当につらかった。
六 尋常一年生、ドイツの尋常一年生!!
四 ヘッケル先生!!私がそのありがたい照明の任にあたってよろしうございま
す。
人々の後ろから登場した男がいる。
トランク抱えたその男はケタケタした感じの、重いんだか軽いんだかわか
らない雰囲気の持ち主。宮澤賢治さんである。
賢治 私はずいぶん素早く汽車から降りた。
全員 あ!!
賢治 そのために雲がキラッと光ったくらいだ。
二 もしや、あなたは?
賢治 隣に乗ってた老婆の銀歯もギラッと光った。
六 やっぱり、
賢治 けれどももっと早い人がいる。
三 それは誰ですか?
賢治 化学の先生の並川さんに似た人だった。
六 化学の先生の並川さんに似た人?
七 退職された化学の先生だよ。
八 ケンジ先生?
全員 ケンジ先生?
九 ケンジ先生ですか?
人々 ケンジ先生ですか?
賢治 今日付けでハンムンムンムンムン・ムムネ中学校に赴任を命ぜられた宮澤賢治
です。
人々 宮澤先生、待ってました!!
人々、大歓迎。賢治を取り巻いて去っていく。
祭りの後の静けさ。
※続きが読みたい、上演希望の方はお問い合わせください。
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