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46「教祖の鸚鵡 金糸雀のマスク」現代浮世草紙集

更新日:2021年12月31日



【公演】TheatreGroup”OCT/PASS”vol.3

    1995年11月8日(水)~12日(日)

    青年文化センター交流ホール

〈出演〉松崎太郎 大山幻太 升孝一郎 螺子転造 南城和彦 石井忍 芥 織部るい

    堀カナン 成瀬優子(新人) 石川裕人


撮影 大槻昌之


 

 『教祖の鸚鵡 金糸雀のマスク(きょうそのおうむ カナリアのマスク)』(冒頭部分)                                    

                                  作 石川裕人  

      

「空の鳥を見よ。かれらは種蒔きもしなければ、刈り入れもしないし、また較       物置き場に集めもしない。そして諸君の天の父はかれらを養うのだ。しかし、       お喋りの鳥をどうするかは知らない。」        マタイ偽伝6―26       音楽。       もうもうたる煙。       パトロールライトが回る。       防護服、ガスマスクに身を固めた数人が作業をしている。       無線交信音。       作業をビデオに収めている者もいる。       高い位口からそれを眺める男女、二人。

男    高速を運転してるときフト思ったんだ。人間が車の中に押し込められて、赤いテ    

     ールランプで移動してるって、

女     うん、

男    それで馬鹿な車が暴走して事故が起こって、自動車だった事がわからないくらい

     グシャグシャになってしまうっていうのは、まるで夏の夜の虫が飛び交って窓ガ

     ラスに当たって死ぬのと同じような光景だなって、

女     私も、そういう気がする。こうしてこの三十階のフロアから見下ろすと人間は蟻

     くらいの大きさで、そんな人間があっち行ったりこっち行ったりせわしなく移動

     してて、どこの誰がどうして死んだかなんて意味がない。神の手で一ひねり。


      間。

      男、双眼鏡を覗く

男   十一月の何日かな、冥王星が射手座にはいってそれから帰ってこないのは。

女   射手座には十一月十一日にはいったきり、後は二千年までずっとそのまんま。

男   ということは、僕たちは一月から四月の間にどういう現象が起きるかを観察して

おいて、十一月十一日から完全に射手座が冥王星にはいった状態をある程度占う

ことができるということかな?

女  そしてそれは宗教戦争が始まるっていうサイン。

男  眠りを覚ました巨人って役どころかな。

女  どうなってる?

男  だいぶ大変な事になってる。

女  もう始まったの?

男  この慌てようはそうかもしれない。

女  どうなるのかな?


間。

男  どっちにしても・もう・怖いことなんか何一つない。

女  そうか、私たちには怖いことなんか・もう・ないんだった。

暗転。


「初恋真理教教会」と看板の出た鳥居。 鳥居には様々な願が懸けられた紙が貼られている。 鳥居から奥に階段状の祭壇。 祭壇中央にわざと傾むかせた十字架、隣に観音像。 そして鳥のはいっていない鳥かご。 太鼓の音がする。

音楽が聞こえてくるが、神楽のようであり、ミサ曲のようであり、念仏のよう

であり、賛美歌のようであり、まるで商店街の売り出しのような猥雑さ。 男女の信徒が二人静々と登場。


 

        ※続きが読みたい、上演希望の方はお問い合わせください。

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